瑕疵担保責任と傾いた家のイメージ

○不動産の瑕疵担保問題について

マンションや戸建て住宅を購入することは、人生においてそう何度もあることではありません。一生懸命働いて稼いだお金を頭金にして、長期のローンを組むなどして、一大決心をして購入に踏み切るという場合が多いと思います。

そのようにして購入した不動産に欠陥が見つかったとしたら、購入した人は大変なショックを受けることでしょう。

そして、購入した不動産に後で欠陥が見つかることは、残念ながら決して珍しいことではありません。

 

このように不動産に欠陥が見つかった場合には、購入した人は不動産業者に対して修補や損害賠償を求めることができ、この不動産業者が負う責任を「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」と呼びます

 

ここでは、戸建て建物が引き渡しを受けてから6か月後に地盤沈下により傾いてしまった場合を例として(以下、「本例」と言います)、この瑕疵担保責任についてまとめてみます。

 

1.「瑕疵」とは

瑕疵担保責任とは、目的物を売った業者または建築した業者が、その目的物に「瑕疵」があった場合に負う責任のことで、ケースによって、目的物の修補もしくは損害賠償の責任を負うことになります。

 

では、この「瑕疵」とは、どのようなことを言うのでしょうか?

 

「瑕疵」とは、「目的物が通常有すべき品質・性能を欠くこと」を意味するとするのが一般です。ただ、この説明では表現が抽象的で具体的なイメージは湧きにくいと思います。そこで、なるべく具体的に建物の「瑕疵」を表現してみましょう。

 

(1)法律違反があること

建物が建築基準法などの建築法規に違反する形で建築されていることです。設計や施工に法律違反がある場合には、そもそも建物の存続自体が問題になりますから、当然「瑕疵」があるということになるでしょう。

 

ただし、軽微な法律違反については「瑕疵」に当たらないとされることもあり得ます。

 

(2)契約違反があること

建物に売買契約や請負契約に違反する部分があることです。例えば、建築請負契約の内容となっている設計図や仕様書などに従った施工が行われていない場合や、売買契約に定められた設備が欠けている場合などがこれに当たります。

 

(3)取引上通常要求される品質・性能に比較して著しく劣っていること

先ほど挙げたとおり、建物が通常有すべき品質・性能を有していない場合には「瑕疵」があるとされますが、「通常」という表現自体が抽象的ですので、これに該当するかどうかは、ケースごとに具体的に判断するほかないでしょう。

 

では、本例のように建物が傾いてしまったケースではどうでしょうか?

 

そもそも、建物自体が傾いている状態では住宅としての機能を正常に発揮することはできません。したがって、「取引上通常要求される品質・性能に比較して著しく劣っている」ことは明らかですから、「瑕疵」があると言ってよいでしょう。

 

また、その原因が建築法規や契約に違反した施工方法などにある場合には、その点でも「瑕疵」があると言えます。

 

いずれにしても、本例では「瑕疵」があると言ってよいでしょう。

 

 

2 「瑕疵担保責任」とは

建物にこのような「瑕疵」がある場合に、業者は責任を負うことになり、これを「瑕疵担保責任」と言います。

 

この責任の内容について、もともとの契約が売買契約の場合と請負契約の場合とに分けて説明しましょう。

 

(1)売買契約の場合

建物に関する契約が売買契約となるのは、分譲マンションや建売住宅を購入した場合や中古住宅を購入した場合ですが、その場合には、物件を売った業者は、次のような責任を負うことになります。

 

①契約の解除(民法570条、566条1項第1文)

瑕疵のために契約をした目的を達することができないときは、購入者は契約を解除することができます。

 

本例のような、建物自体が傾いてしまったケースでは、傾きがわずかである場合を除いては、契約をした目的(住宅として居住する目的)を達することはできないということができるでしょうから、購入者は売買契約の解除をすることも考えられます。

 

②損害賠償(民法570条、566条1項第2文)

瑕疵によって購入者が受けた損害について、業者はその損害を賠償する責任を負います。①に述べた契約の解除までは認められない場合には、購入者は業者に対してこの損害賠償を請求することができます。

 

本例での建物の傾きがわずかである場合に、購入者が別の業者にその対策の工事を依頼した場合の費用などがこれに当たるでしょう。

 

③瑕疵の修補

民法が明文で定めている瑕疵担保責任は、①の契約解除及び②の損害賠償のみです。ただ、判例の中には、これらのほかに瑕疵修補義務を業者に認めたものもありますので、本例では、購入者としては、業者に傾きを修補する工事を行うよう請求することも選択肢に入ります。

 

なお、売買契約の場合には、民法は、売買の目的物に「隠れた瑕疵」があったときに売主(業者)が瑕疵担保責任を負うとしています(民法570条)。この「隠れた」とは、購入者が瑕疵を知らなかったことについて過失がなかった場合をいうとされていますが、本例のように引き渡しには正常だった地盤が引き渡し後に沈下して建物が傾いたようなケースでは、購入者はそのような事情を知らなかったことに過失がないことは明らかですから、隠れた瑕疵があったとしてよいでしょう。

 

また、本例以外でも、建物の瑕疵が問題となるケースでは、専門家ではない購入者は瑕疵を知らなかったことについて過失がないとされるのがほとんどでしょうから、ほとんどのケースで「隠れた」瑕疵があったものとされるでしょう。

 

また、目的物が中古住宅の場合には、瑕疵の有無についての判断が難しいケースが考えられます。というのは、中古住宅の場合には、ある程度の不具合があることは予想されることであり、それが「隠れた瑕疵」に当たるのかどうかは、「中古住宅」であることを前提として判断されることになるからです。したがって、新築の住宅であれば「瑕疵」ありとされるようなケースでも、中古住宅の場合には「瑕疵」なしとされることも考えられます(例えば、雨漏りなど)。

 

(2)請負契約の場合

建物に関する契約が請負契約となるのは、注文住宅を建築する契約を業者と交わした場合です。このような請負契約を締結したものの、完成した建物に瑕疵があった場合には、工事を請け負った業者は次のような瑕疵担保責任を負うことになります。

 

①瑕疵の修補

目的物に瑕疵があるときには、原則として業者は瑕疵を修補する義務を負います(民法634条1項)。

 

本例では、業者は建物の傾きを修補する工事をすることとなるでしょう。

 

②損害賠償

瑕疵がある場合には、瑕疵の修補を求める代わりに、瑕疵の修補にかかる費用を請求することもできます。瑕疵のある工事をした業者に再び修補の工事をやって貰うのは抵抗があるという考えもあるでしょうから、そのような場合には修補工事にかかる費用を請求することができます。

 

また、瑕疵の修補を求めるのと並行して損害の賠償を求めることもできます。例えば、瑕疵を修補してもらっても、その工事の間建物を利用できない場合には他の住居を借りなければならず借り賃が発生するなど、別に損害が生ずることがあります。そのような場合には、その損害の賠償も求めることができます。

 

したがって、本例でもそのような事情があれば、損害の賠償を求めることができます。

 

なお、瑕疵のために契約目的が達成できない場合には、注文者は契約を解除することができるとの規定がありますが(民法635条本文)、目的物が建物その他の土地の工作物である場合にはこの解除権は及びませんので、本例では契約の解除をすることはできません(民法635条但書)。

 

3.瑕疵担保の期間

以上に説明した瑕疵担保責任を追及するには、時間的な制限がありますので注意しなければなりません。

 

具体的には、売買契約の場合には、瑕疵を知ったときから1年(民法570条、566条3項)、請負契約の場合には、目的物の引き渡しから構造によって5年から10年(民法638条1項)が経過すると、それぞれ瑕疵担保責任が消滅してしまいます(但し、民法638条2項の例外あり)。

 

4.瑕疵担保責任を追及する場合の流れ

不幸にも購入した不動産に瑕疵を発見してしまった場合には、2に述べた瑕疵担保責任を業者に対して追及することになります。

 

その場合、まずは業者と交渉を行って修補や損害賠償を求めていくことになりますが、話し合いをしても、瑕疵の有無や損害の額について合意ができないことも考えられます。

 

話し合いで解決できない場合には、訴訟を提起することとなりますが、不動産の瑕疵に関する訴訟においては、瑕疵の有無や損害の評価などについて専門的な判断が要求されますので、弁護士への委任は不可欠と言えるでしょう。また、ケースによっては、建築士など建築の専門家の協力を求める必要もあります。

 

したがって、訴訟をする場合には、建築の専門家とのパイプを持った弁護士に依頼するのが早道ということができます。

 

5.まとめ

 

以上、不動産の瑕疵担保責任について述べてきましたが、この瑕疵担保責任に関する争いは、民法のみでなく、宅建業法や建築基準法など多くの専門的な法律にまたがって問題が生じます。したがって、トラブルが発生した場合には、早期に弁護士に相談する必要がありますし、場合によっては交渉の段階から弁護士に委任して行なっていった方がよいケースもあります。

 

瑕疵担保責任を追及するには期間制限もありますから、瑕疵に気付いた場合には、直ちに弁護士に相談することを強くお勧めします

 

6.埼玉県で瑕疵担保責任追及をお考えの方はエクレシアまで

エクレシア法律事務所は不動産トラブルについても扱っており、瑕疵担保問題についてのご相談もお受けしております。

非常に高度な問題でもありますので、弁護士への依頼が必須な分野だと思われます。

埼玉県越谷市、春日部市、草加市、川口市、吉川市、三郷市、八潮市、東京都足立区、千葉県松戸市、柏市、流山市などの地域の方は当事務所までご相談ください。

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